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奇跡のタイミングと、せこい自分

9.18.2018

雑文

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自宅に溜まった段ボールを
そろそろ捨てねばならない。


そう思いながら
何ヶ月経っただろうか。

このままでは
いずれ我が家は段ボールで埋め尽くされることだろう。

そうはさせないのである。


捨てるにしても
限られた日でないと自治体は回収してくれない。

なので
郊外によくある無料回収場所まで
車で運ぶことにした。



朝から重い腰を上げて
紐でまとめた段ボールを両手に一括りずつ抱え
車へ積み込むため自宅を出た。

すると
ものすごくゆっくり走る軽トラックが
自宅前を通り過ぎるところだった。

その積荷を見ると
新聞、雑誌、段ボール。

なんと、不定期で走っている回収車だったのだ。


「なんちゅータイミング!!」


しかし軽トラックは無情にもゆっくりなスピードで
そのまま走り過ぎて行った。

と、思いきや
運転手がサイドミラーで段ボールを抱えた自分を見つけたのだろう。
止まってくれたのだ。

ぶっきらぼうな感じの高齢男性が、おもむろに降りてきた。
日に焼けた皮膚に白髪がよく映える。


すかさず
「持って行ってくれはるんですか?」と質問。

「乗せて」と一言。
予想通り、ぶっきらぼうである。

言われた通り段ボールを積み込むと
その運転手はズボンのポケットに手を突っ込んだ。

ポケットの中で手をモゾモゾさせている。

何か握りしめた手を、自分の前に突き出した。


「これくらいしか無いけど」

手が開かれる。


10円玉、、、3枚。


どれくらいの沈黙があったかは覚えていないが
硬貨3枚にしばらく目が釘付けになっていると、


「・・これくらいしか無いけど」

と再び。


「え、くれはるんですか?」

その手から30円を受け取り
またゆっくりと走り出した軽トラックを見送った。




自宅に戻り、落ち着いて考えてみる。

「これくらいしか無いけど」って事は
本当ならもう少し貰えたのではなかろうか・・。

回収のシステムを全く理解していない自分としては
損してない?などと勘ぐってしまうのだ。


せこい。とても、せこい。

でも、そんな自分が嫌いではない。


車を走らせ捨てに行く手間とガソリン代を考えたら
プラス30円でも万々歳なのである。



合掌。




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