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電車に乗っていると
自分の隣に年配の男性が座ってきた。
とたんに懐かしい香りがする。
豆腐屋さんの濃厚なニオイだ。
昔はチリンチリンという音を合図に
移動式豆腐屋さんが地域をまわって売っていたのを思い出す。
古き良き昭和の風景である。
おかげで
なんだかお腹が空いてきたぞ。
今日の晩酌のアテに
豆腐をラインナップに加えようと心に決めた。
それはさておき
なぜ豆腐のニオイがするのだ。
隣に座った年配の男性をチラ見する。
手荷物は無いようだ。
豆腐を持っている訳ではなさそうである。
そうか
きっと豆腐屋さんで働いているのだろう。
そう思って
もう一度その年配の男性をチラ見する。
飲食関連で働いているようには見えない。
服と靴はボロに近いし
肌も良く日に焼けている。
・・・もしや
この豆腐のニオイは体臭ではあるまいな。
不覚にも
そのニオイで胃袋が反応してしまった自分が
大嫌いである。
晩酌のラインナップに加えられた豆腐の姿を必死で消しながら
電車を後にした。



